日本の金融業界を牽引する株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)。株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の一員としてリテールから法人、グローバルに至るまで幅広い顧客基盤を持つ同行では、MUFGのパーパス「世界が進むチカラになる。」に基づき、お客さまの大切な資産を「ためる」「ふやす」「まもる」「つなぐ」ための様々な商品・サービスを展開している。特に先進国の成長率の鈍化やテクノロジーの変化、顧客行動の多様化が進む現在、持続可能な未来を実現するためには、商品・チャネル・グローバル化など総合的な進化が欠かせない。
同行においてSNSは、顧客との重要なコミュニケーションチャネルの一つだ。しかし、その活用には厳格な情報セキュリティ、多段階にわたる承認プロセス、数年単位で担当者が入れ替わる人事異動などの課題を抱えていた。これらの課題を解決するために、同行はSocial Insightを導入。Social Insightは単なる業務効率化にとどまらず、組織のSNSに対する意識をも変革させつつあるという。ここでは、同行でSNS運用を統括する経営企画部 ブランド戦略グループの梅原氏に、導入の背景から具体的な活用法、成果などについて伺っていく。
三菱UFJ銀行では、XやInstagram、Facebook、LinkedIn、YouTubeなど幅広いSNSアカウントを運用している。同行は金融機関として厳格なガバナンス体制を敷いており、対外的な発信内容の確認に要するプロセスに課題を感じていた。「SNSで対外的に情報を発信する際には、上長による複数回の確認プロセスが存在していました。メールにスクリーンショットを添付して送ったり、オンライン会議で画面共有をしながらダブルチェックを行ったりと、一つの投稿をするにも工数が多いことに悩んでいました」と梅原氏は当時を振り返る。
特に、コロナ禍で在宅勤務が主流になると、上長とのタイムリーなコミュニケーションが難しいこともあり、承認を得るまでに時間を要するケースも少なくなかった。結果として、投稿内容が決定してから実際に公開されるまで、早くても半日、時には1日以上かかることもあったという。
SNSでは、世の中のトレンドや緊急性の高い情報をいち早く届けなくてはならない場面もある。しかし、梅原氏が「できるだけ早く発信したい内容があっても、タイムリーに公開できないケースもありました」と語るように、投稿プロセスの効率化は無視できない課題となっていた。
さらに、定期的な異動が発生する人事制度もSNSを運用する上での課題となっていた。「当行では3年程度でローテーションが行われるため、担当者が変わる際の引き継ぎや、運用のノウハウをいかに継承していくかという点に課題を感じていました」と梅原氏。担当者が変わると運用ノウハウや蓄積したデータが失われかねない。
「投稿までの非効率なプロセス」や「異動による引き継ぎ」といった課題を解決するため、三菱UFJ銀行は2019年9月にSocial Insightの導入を決定した。その決め手は、機能の充実だけではなかったという。
一つは、誰にとっても直感的で分かりやすい「シンプルなUI」だ。担当者が頻繁に入れ替わる環境下でも、専門知識がなくてもスムーズに業務を引き継げる操作性は、必須の要件だった。そしてもう一つが、ツール提供にとどまらない「手厚いサポート体制」への期待感だった。Social Insightの使い方だけではなく、SNS運用に関するあらゆる悩みに応えるパートナーとしての信頼感が、導入を後押しした。
Social Insightを導入した三菱UFJ銀行は、投稿管理機能を活用して複数回にわたる承認プロセスを効率化している。以前はメールやオンライン会議でダブルチェックを行っていたのに対し、導入後は担当者がSocial Insight上で投稿を作成して承認依頼を出すと、上長や梅原氏がシステム上で内容を確認し、承認するのみとなった。「Social Insightは、担当者と承認者がそれぞれ都合の良いタイミングで同じツール上で承認作業を行えるため、柔軟に投稿できる点が非常に魅力的です」と梅原氏は運用が効率化したことを教えてくれた。投稿の効率化により、現在は担当者と梅原氏のわずか2名という最小人数での運用体制が実現しているという。
投稿管理機能について梅原氏は「プラットフォーム上で申請から承認、公開までが一元管理されることで誤投稿のリスクを低減できるため、ガバナンスがしっかり機能する仕組みだ」と語る。
また承認プロセスが効率化されただけでなく、三菱UFJ銀行はSNSアカウント分析機能により、データに基づく投稿内容の最適化も実現した。
梅原氏は「Social Insightでは過去の投稿データを遡って分析できるため、どのような投稿や文言がユーザーに響きやすいのかを把握できます。フォロワー数の推移などもグラフで可視化されるので、施策ごとの費用対効果が測りやすくなりました」と教えてくれた。
実際に梅原氏は「銀行は『お堅い』イメージがあるかもしれませんが、アカウント分析の結果、問いかけるような柔らかい口調で語りかけたり、絵文字を活用したりする投稿が、ユーザーに受け入れられやすいということが分かりました」と、新たな気づきがあったという。
さらに、季節性を意識して年始に「明けましておめでとうございます」と投稿したり、協賛しているスポーツのイベント時にモーメントに合わせた投稿をすることでエンゲージメントが高まることもSocial Insightのデータから把握できたという。
三菱UFJ銀行は投稿内容だけでなく、投稿時間の最適化にもデータを活用している。「夕方5時から6時頃の、多くの方が退社される時間帯が最も閲覧されやすいという傾向も掴めています。そのため、他部署から『何時頃に投稿するのが効果的か』と尋ねられた際にも、このファクトデータが非常に役立っています。さらに他社の投稿時間帯も簡単に分析することができるので、今後の方向性を検討する際の参考としても活用しています」と梅原氏は語り、得られたデータが組織全体に還元されている様子がうかがえる。
Social Insightのクチコミ分析機能は、社会の声をリアルタイムで捉える機能としても重要な役割を果たしている。
「不正送金関連の話題や『アプリ障害』といったネガティブな事象に関する投稿をモニタリングしています。Social Insightには登録したキーワードが急増した際にメールアラートが届く機能があり、リスクの兆候を早期に検知できています」と梅原氏が語るように、レピュテーションリスクの早期検知にも役立っている。
加えて、社内から影響範囲に関する報告を求められた際、レポート機能を活用して迅速に状況を出力し、コメントを加えて上層部へ報告することができる。「タイムリーに情報を得て、簡易レポートが瞬時に作成され、それをベースに報告できるという一連の仕組みは非常に素晴らしいと感じています。特にレポートはワンクリックで出力されるため、迅速な社内報告が求められている際に大きく貢献しました」と梅原氏はレポート出力による業務効率化についても語っている。
日々、Social Insightを活用している三菱UFJ銀行は、導入後も手厚いサポートとアップデートを続ける機能に感心しているという。「担当の方のレスポンスが非常に速く、各部署からの問い合わせにも親身に対応いただけるので、大変ありがたく思っています。ツールの使い方にとどまらず、SNS運用全般に関して相談に乗っていただくこともありました。今では『SNSで困ったらユーザーローカルさんに相談する』というのが、私の中で定着しています」と梅原氏は語る。
開発体制についても「SNSの規約は日々変化しますが、それに合わせて開発が進み、新しい機能が迅速に追加されていく印象を持っています。最近ではリポストやツリー投稿の予約ができるようになり、活用の幅が広がりました」と教えてくれた。このSocial Insightに対する信頼こそが、活用を組織に浸透させ、価値を最大限に引き出す源となっている。
Social Insightの導入により、三菱UFJ銀行のSNS投稿にかかる業務時間・工数は全体で約50%削減されたという。特に、課題であった投稿承認にかかる時間は「半日〜1日」から「ほぼ即時」へ短縮された。また、データ活用を推進した結果、公式Instagramのフォロワーは半年間で29,029から48,380と約166%増加、強化中の「MUFG工芸プロジェクト」のアカウントは同期間で約3倍に増加するという成果にも繋がっている。
業務効率化やフォロワーの増加以外にも、組織にもたらされた効果として意識の変化が挙げられる。「SNSの重要性について各部署の認識が高まってきていると感じます。『Social Insightを使って、もっとこんなことはできないか』といった前向きな相談が、確実に増えました」と梅原氏は社内の変化を教えてくれた。
最近では、外部の代理店に依頼していたSNSキャンペーンをSocial Insightの機能を使えば内製できると知り、他部署に展開したという。「新しいキャンペーンを計画している部署から相談を受け、SNSキャンペーン機能を紹介しました。内製できるようになったことで、コスト削減にもつながりました」と梅原氏。
梅原氏は今後の展望について「Social Insightにはまだ活用しきれていない機能があるので、各部署も巻き込みながら、会社全体で活用のレベルを上げていきたいです。特にInstagramのレポートでは、リーチしているユーザーとフォロワーの差分が可視化されるなど機能が充実してきています。SNSの発信を通じて多くの人に私たちの取り組みを知ってもらうことで、MUFGを好きになってもらうきっかけを作っていきたいです」と語ってくれた。
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